コロナ禍ではウイルスは次々と変化した（写真：つのだよしお/アフロ）コロナ禍でウイルスは次々と変化した（写真：つのだよしお/アフロ）
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　デルタ、オミクロンと、次々と姿を変えながら人々の暮らしを脅かした新型コロナウイルス。その変異は人類の対策を待ってはくれず、私たちは常に後手に回らざるを得なかった。だが、伊東潤平氏（東京大学医科学研究所准教授）は「次に流行する変異株は予測可能だ」と語る。AIとゲノムデータを武器に、感染症の「未来」を読み解く研究について、伊東氏に話を聞いた。（聞き手：関瑶子、ライター＆ビデオクリエイター）

──AIを用いて、次に流行するウイルスの変異株やウイルスの進化の予測をしていると聞きました。

伊東潤平氏（以下、伊東）：はい。私の研究チームでは、ウイルス感染症を制御するためのバイオインフォマティクス・AI技術を開発しています。複数のテーマを軸に研究を進めており、そのうちの1つがウイルスの次期流行株予測と進化予測です。

　ウイルスは次々に進化し、その性質が変化するため、ウイルス感染症の制御は非常に難しいと考えられています。新型コロナウイルスのパンデミックでは、免疫逃避能（※）や流行拡大能力（適応度）をパワーアップさせた変異株が次から次に登場したことは、記憶に新しいと思います。

※ウイルスや細菌などの病原体が宿主（ヒトなど）の免疫システムから逃れる能力のこと。

　そこで、感染症の拡大を制御するために、新しく出てきた変異株の性質をできる限り早く明らかにしていくことが重要となります。

──どのような性質を見極めることが求められるのですか。

伊東：まずは、適応度です。どんなに病原性が高いウイルスであっても、集団内で感染が拡大する力が弱ければ、それほど大きな脅威にはなりません。もちろん、病原性そのものや既存のワクチンや治療薬への感受性も、知っておくべき重要な性質です。

　私たちは、主に適応度に着目した次期流行株予測とウイルス進化予測を研究しています。私なりの言葉の定義ですが「今ある変異株の中でどれが次に流行するのか」という予測を「次期流行株予測」と呼んでいます。

　一方で、「どのような新しい変異株が将来登場するか」という視点の予測は「進化予測」と位置付けています。

──どのようにして、次期流行株を予測しているのでしょうか。

伊東：AIを活用しています。