変異株の実効再生産数をリアルタイムで監視するには
伊東:例えば、ある変異株Aと別の変異株Bが観測されたとします。このとき、流行の中心は変異株Aです。ただ、しばらく経過観察を続けると、変異株Bが変異株Aを押しのけるように流行を拡大させていきます。
このとき、変異株Aと比較して変異株Bの適応度が高いことが推測されます。そこで、ウイルスゲノム疫学調査のデータの中から、変異株AとBの検出頻度を縦軸に、時間軸を横軸にプロットします(下図・左側)。

このプロットに、シンプルな統計モデルを当てはめることで、変異株Aに比べて変異株Bが増える速度が何倍速いか、ということを推定できます。この推定値から、相対的な実効再生産数Re(※)を算出します。
※1人の感染者が平均して何人にウイルスを感染させるかを示す数値。ここでは変異株間の適応度を比較する指標として、変異株間の相対的な実効再生産数を使用している。
このように、実効再生産数を推定することで、変異株それぞれの増えやすさ、流行の拡大しやすさを予測できます。
例えば、あらゆる地域におけるすべての変異株の実効再生産数をリアルタイムに監視できれば、次にどの変異株が流行拡大するのかを予測できると考えられます。
そこで、私たちはウイルスゲノム疫学調査のデータベースを監視して、実効再生産数が高い変異株の出現を自動で検出する次期流行株の予測システムを構築し、2022年1月から現在に至るまで運用してきました。
──運用の実績について、教えてください。