ホワイトハウスでテレビのインタビューに答えるマイケル・ウォルツ氏(5月1日、写真:AP/アフロ)

第1期政権の「混乱人事」再現か

 米国のドナルド・トランプ大統領は5月1日、マイケル・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任し、トランプ政権では「お飾り」ポストといえる国連大使に指名すると発表した。

 就任100日にして軍事外交政策の要である国家安全保障担当補佐官を左遷するとは・・・。

 第1期政権では3人の国家安全保障担当補佐官を解任したトランプ氏。手始めはマイケル・フリン氏、続いてH・R・マクマスター氏、ジョン・ボルトン氏と1年ごとに更迭してきた。

 英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のエドワード・ルース記者が言うように、「カオス・キング(混乱している王様)にとっては日常茶飯事のカオス(混乱)人事」なのかもしれない。

nymag.com/intelligencer/article/marco-rubio-might-have-his-jobs-but-hes-no-henry-kissinger

 ウォルツ切りは、第1期政権の混乱ぶりを彷彿させる更迭劇の第1幕といったところだ。

ウォルツはMAGAではなくネオコン

 トランプ氏にとっては、国家安全保障担当補佐官のポストは鬼門のようである。

 ウォルツ氏は、海軍特殊部隊員として従軍、「ネオコン」(新保守主義)のドナルド・ラムズフェルド元国防長官の下で国防政策を立案した。

 退役後の2018年、フロリダ州から下院議員選に出馬して当選(この時は元国連大使・元国家安全保障担当次席補佐官のナンシー・ソダーバーグ民主党候補に大勝している)。

 下院では共和党議員15人と共に「中国タスクフォース」を結成し、中国共産党による諜報活動の摘発をはじめ。強硬な対中政策を次々と打ち出してきた。

 2024年の大統領選ではいち早くトランプ氏を支持、トランプ氏への「忠誠度テスト」にも合格して、ホワイトハウスで国務、国防両省、情報機関を睥睨する「御用人」に取り立てられた。

 しかし、トランプ支持のカルト的グループといえるMAGA(Make America Great Again=米国第一主義)の一員ではなかった。

 その意味では、マルコ・ルビオ国務長官、ピート・へグセス国防長官と同じような共和党保守派ネオコンのカテゴリーに入る。

 今回の更迭の直接原因は、通信アプリ「シグナル」を使って極秘情報を部外者に漏らしたシグナルゲート事件にあるとみられている。

 3月に実施したイエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する空爆作戦の際、へグセス国防長官ら政権閣僚らと協議するグループチャットを「シグナル」に立ち上げた。

 この時、誤って米誌「アトランティック」のジェフリー・ゴールドバーグ編集主幹を「招待」していた責任を問われた形だ。

 同誌のゴールドバーグ氏は作戦終了後、そのグループチャットの全容を暴露したため、トランプ政権中枢の杜撰な国家機密情報管理の実態を世に問う形になったからたまらない。

 なぜそんなことが起こってしまったのか。

 トランプ氏は、ウォルツ更迭の直前、シグナルゲートに関する責任を取らせる形でウォルツ氏の側近数人を解任した。

 AP通信によると、解任された主な側近たちは以下の通りだ。

●ブライアン・ウォルシュ情報担当上級部長(ルビオ上院議員側近)
●トーマス・ブードリー議会担当上級部長(ウォルツ下院議員側近)
●デイビッド・ファイス技術担当上級部長(国務省から出向)
●マギー・ドハティ国際条約担当上級部長(ルビオ上院議員補佐官)

(かっこ内の肩書はいずれも当時)