国慶節に合わせて新政権を発足させた?

――そのことは何を意味しているのか? 中国は石破新総裁誕生を、歓迎していなかったのか?

「そうではない。中国は、単に様子見をしていたのだ。石破新総裁は、『日本にとって中国は大変重要な国だ』『日中の首脳同士の対話を積み重ねたい』などと言い、わが国への歩み寄りを示している。だがその一方で、8月には台湾を訪問し、頼清徳(総統)と会談した。また、『アジア版NATO(北大西洋条約機構)』の創設などという愚かな夢想を公言している。

 そうした石破氏の“中国観”が、中国としてよく分からないのだ。だからニュースは、『石破新総裁誕生』という事実だけを淡々と伝えた」

8月13日、台湾を訪問して頼清徳総統と会談した石破茂氏(石破氏のインスタグラム[@ishibashigeru]より)
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――石破氏はその後、10月1日に首相に就任し、新政権を発足させた。改めて聞くが、石破新政権を、中国としてどう見ているか?

「10月1日がどういう日か分かるか? われわれ中国人が最も大事にしている国慶節(建国記念日)だ。

 特に今年は、建国75周年で、習近平執行部だけでなく、すでに引退した過去のリーダーたちも人民大会堂に姿を見せ、盛大に祝った。石破新首相は、そのような日に、新政権を発足させたのだ。

 古代からアジアは、中国を中心とした冊封(さくほう)体制によって秩序立てられてきた。周辺国は中国に朝貢し、中国の暦を使用したのだ。

 石破氏がわざわざ中国の国慶節を選んで新内閣を発足させたというのは、そうした古代からのアジア秩序を重んじたかのようではないか」