――それは中国の思い上がりというのもので、単なる偶然だ。ついでに言えば、新総裁就任の時にパンダが中国に返還されたのも偶然だ。

「それはそうかもしれない。だが北京から見ていると、石破新政権は中国に気を遣っているように映るのだ」

「アジア版NATOなど実現不可能」

――それでは、石破新首相が提唱している「アジア版NATO」の創設は、中国として脅威に感じているか?

「正直言って感じていない。なぜなら、そのような新たな集団安全保障の体制が東アジアに実現するとは、とても思えないからだ。北京では、『拾破帽』と言っているぞ(笑)」

――それはひどい。「石破茂」(シーポーマオ)が、「拾破帽」(同じ発音で、「破けた帽子を拾う」の意)か。

「その通りだ。日本は第二次世界大戦後、周知のように長きにわたって、アメリカと軍事同盟を組んできた。それはいまの日本人に、しっかりと染みついているだろうし、わが国を始めとする周辺国も承認してきた。

 それを今後は、『アジア版NATO』だと石破首相は言う。具体的に日本は、どの国と組むのか? 韓国か、インドか、フィリピンか?

 もし韓国と組めば、韓国が北朝鮮と戦争になった際、日本も参戦することになる。そうなれば北朝鮮の核ミサイルが、東京にも撃ち込まれるだろう。

 インドと組めば、中国とインドの国境紛争に日本も巻き込まれることになる。2020年に両国の間で、激しい軍事衝突が起こったばかりだ。今度同じ軍事衝突が起こったら、日本は自衛隊をヒマラヤ山脈まで派遣するのか?

(参考)中国が「中印国境の死闘映像」公開、次は尖閣が舞台[JBpress 2021.2.24]