いや、毎年子どもを産む親世代の人口は年々減っていきますので、それを計算に入れると2万人にも届かないということになるのです。

 しかも、全員がその自治体を出ずに、100歳まで生きるという前提ですから、その不自然さも考えれば、5万人が簡単に1万人くらいになると思った方が良いというのは、地域にいると肌感覚で分かります。

 そうした危機にさらされている地域ですら「じゃあ子どもを産んでなんとかしよう」という気運にはなっていなません。そうであるならば、人口減の危機を肌感覚ではつかみにくい都市圏も含めた日本全体が「子どもをもっと産んでなんとかしよう」という雰囲気になるのは相当ハードルが高くなります。

少子化は「幸せな人生とは」を問い直すチャンス

 こうやって見てくると、少子化を食い止めようというのはどだい無理な話のように思えてきます。少子化は日本社会にとって大きな危機なのですが、だからといって私たちひとりひとりが、そのピンチを少しでも和らげるために自分でできることをしようという発想には結びつきにくい状況にあります。

 ただ私は、このピンチは、ある意味では私たちが、日本社会とか日本人、もっと言えば人類の在り方を考えるチャンスなのではないかと思うのです。