「もっと子ども産もうよ」という機運はつくれるものなのか

 それは、政府も指摘していることですが、少子化や人口減少という状況を改善するためにもっとも必要な対策は、子どもを産み、育てていこうという気運を社会全体で醸成してくということです。実は、かくいう私も、内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局の依頼で、少子化対策に向けた気運醸成のアドバイザーを2カ月前から拝命しています。意識改革というのは、体質改善的な話であり、即効性は望めない話ではあるのですが、本質的に重要だと感じています。

 端的に言えばみんなが「もっと結婚しよう」「もっと子どもを産もう」という雰囲気になってもらうということです。ただし、これは方向を間違えると、戦前の「産めよ殖やせよ」的なことになってしまいます。個人の生き方やプライバシーに政府が踏み込んでいいのか、という反発もあるでしょう。これは非常に難しいところです。

 そもそも、少子化でピンチだから子どもを産もう、という危機感からの気運醸成は極めて難しいものです。個々の家庭を考えてみれば分かりますが「少子化で国家が危機的状況にある、だからうちは社会のためにも子どもを産まなきゃ」とは普通はなりません。もちろん、そういう危機感から子どもを産まなきゃと思う素晴らしい方々もいるとは思いますが、普通はそうはなりません。仮にそういう方々が沢山いるのであれば、各地では、とっくにそういう危機感から、出生率は上がっていなっていないとおかしい状況です。

 東京などの大都会で、満員電車や人ごみに日常的に触れている人は「少子化」「人口減」と言われてもピンと来ない人もいるかも知れません。

 しかし地域はそうではありまません。たとえば人口5万人くらいの都市圏以外の地方の自治体の場合、毎年生まれる子どもの数は、もちろん地域差もありますが、ざっくり言えば200~250人くらいでしょう。

 ではこの200人が全員、ずっとその自治体で生活し、きっちり100歳まで生きたとします。その場合、単純計算すると100年後のその自治体の人口は200人×100年で2万人です。いま人口5万人の自治体が100年後には2万人になるのです。