大掛かりな現金支給という大盤振る舞いが必要という議論にはうなずける部分もあるのですが、ただ、現在の政府の財政状況を考えたり、さらに「子どもがいる人ばかり優遇して…。今、食えない人に配るべきでは?」といった批判を勘案したりすれば、これは実現が困難な選択です。サステナブルであるとも言えません。

 であれば、少子化を食い止め、流れを逆転させるために必要なことは何でしょうか。現在、議論されている対策としては、ざっくり言って次の3つがあるかと思います。

少子化政策に関する自民党総裁選候補者の発言。果たしてこれで少子化が食い止められるのか…(提供:共同通信社)
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東京はブラックホール?都心3区の既婚女性は全国平均より子どもを産んでいるのに…

 ひとつは、もっと地域に人を移すという対策です。東京の「0.99ショック」についてはすでに触れましたが、他の道府県は東京と比べて合計特殊出生率が高くなっています。人口戦略会議が、少し前に「東京はブラックホールだ、若い世代を吸い込んでみんな子どもを産まない」というふうに批判したのもその流れです。そこで、出生率の低い都市部から出生率が高い地域への移住をもっと促さなければといけないというのがこの議論の主旨です。

 地域における人口減少対策や地域活性の文脈で、国交省も最近、「二地域居住」を推進しています。二地域居住とは、いきなり地域に移住するのではなく、例えば、平日は都市部で仕事をし、休日は地域に住んでゆったり趣味や休息の時間をとるような二つの地域での生活のことです。いずれは東京から地域へという人の流れを作ることにもつながり得ます。

 私もこれまで、地域を活性化させるため、大都市圏に集中した人口を地域に分散させいくことの必要性をこれまで訴えてきました。このJBpressでも、例えば首都機能移転についても書いたことがあります(「コロナ危機に大胆な経済対策を!新・首都機能移転論」JBpress 2020年3月27日)。ですから地域活性化という点では地域分散に賛成です。どんどん進めてほしいと思います。ただ、こと人口問題に関して言えば、それが解決策になるとは思っていません。

 というのも、例えば「有配偶出生率」という配偶者がいる人の出生率に注目すれば、実は東京は全国平均を上回る数字になっていることからも明らかです。

 どういうことでしょうか?