報酬3万円でも意欲の高い人材が集まる
会社の業務全般に目を配る週1副社長には、一つの分野に精通したスペシャリストより、幅広い業務経験をもつゼネラリストの方が適している。大企業に勤める人は、複数の部署を経験している傾向があるうえに、数が多いのでマッチング率も高まる。コロナ禍にリモートワークが浸透したことで、副業・兼業人材の送り出しを考える都市部の大企業との連携も進んでいる。
プロ拠点では、副業・兼業人材への報酬の基準を月3万円に設定する。報酬が高すぎると、期待どおりの成果を出せないのではと気後れしたり、拘束時間が長くなることを心配したりして、ゼネラリストが手を出しにくくなる。
一方で、無報酬では責任感が薄くなり、仕事の出来がいいかげんになるおそれもある。
月3万円は、副業・兼業による報酬よりも社会や地域への貢献を重視する人が集まりやすく、かつ、報酬を支払う受け入れ企業の負担が重くならない、バランスのとれた金額なのである。
先の山陰松島遊覧(株)の求人に対して応募した東京在住の佐藤浩一郎さんは、好きな地域とのつながりをつくりながら自身の経験値を高められることを考えれば、月3万円でも十分だと考えた。
契約後は、浦富海岸が砂丘から車で10分ほどと近いことや、近隣に温泉地やアニメの聖地があること、遊覧船での船長のトークが軽快で乗客に人気であることをアピールすべきだと、川口社長に進言した。どれも川口社長にとっては当たり前の存在だったが、外から見れば立派な観光資源であった。
佐藤さんと若手社員でホームページやSNSでの発信を強化し、船長による動画配信も始めた。
都市部の優秀な人材を副業・兼業人材として招き入れられた後は、その能力を十分に引き出し、地域とのかかわりをもち続けてもらうために、人材との付き合い方も重要になる。次回は、副業・兼業人材と受け入れ企業や地域の関係をいかに構築していくか、事例を用いながら考えたい。
>>後編へ続く(2024年10月2日公開予定)