副業・兼業の「週1副社長」とタッグ

 リクルート「兼業・副業に関する動向調査データ集2022」によれば、副業・兼業を行う動機としては、収入の増加といった経済的なものが最も多い(表2)。しかし、所定内給与額の上位を都市部が占めていることからも、地方の中小企業が都市部より高い報酬を提示することは難しいと思われる。

 一方で、副業・兼業人材のなかには、スキルややりがいの獲得、社会への貢献といった非金銭的な動機をもつ人もいる。地方の場合、こうした層にアプローチする方が効果的である。

表2:副業・兼業を行う理由(複数回答)
資料:リクルート「兼業・副業に関する動向調査データ集2022」
(注)「兼業・副業実施中の人」および「過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人」に尋ねた結果。回答数は932人。表2:副業・兼業を行う理由(複数回答) 資料:リクルート「兼業・副業に関する動向調査データ集2022」 (注)「兼業・副業実施中の人」および「過去に兼業・副業の実施経験があり、今後実施意向(再開予定)がある人」に尋ねた結果。回答数は932人。
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 鳥取県のプロ拠点では、経営者に寄り添い、一緒に経営課題解決の道を探る「週1副社長」を募集する。副業・兼業人材にとっては、依頼業務が具体的に指定されるタスク型と異なり、企業のトップの目線で課題解決に取り組む貴重な経験になる。そこで得られるやりがいや社会貢献、地域とのかかわり、スキルの構築が、副業・兼業のプラスαの価値となって副業・兼業人材を引きつける。

「週1副社長」というコンセプトを維持するために、マッチングサイトに掲示する各社の募集要項は、プロ拠点がすべて作成している。なかには、単にホームページの制作を依頼しようとする経営者もいるが、ホームページをつくりたい理由を探りながら経営者の悩みや目標まで掘り下げ、副業・兼業人材に真に期待することを浮き彫りにする。

 例えば、県内の浦富海岸で遊覧船を運営している山陰松島遊覧(株)の求人票のタイトルは、「シーアクティビティをマーケティングで支えてください!」であった。砂丘にばかり観光客が集まる現状を打開したいという川口博樹社長の思いをワンフレーズで端的に表現している。