「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」展示風景。国宝《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12〜13世紀) 撮影/JBpress編集部(以下同)

(ライター、構成作家:川岸 徹)

東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)にて茶道具をテーマにした特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」が開幕。静嘉堂が展示ギャラリーを丸の内に移してから初めての、静嘉堂としても実に8年ぶりの茶道具展になる。

“目垢まみれ”でも見たい珠玉の名品

 静嘉堂所蔵の茶道具は三菱第2代社長の岩﨑彌之助(1851~1908)とその嗣子で第4代社長の岩﨑小彌太(1879~1945)の父子二代によって収集されたもの。その数およそ1400件に及び、本展ではその中から前後期あわせて79件が出品される。展覧会に先駆けて行われた報道内覧会で、安村敏信館長がこんな話を披露してくれたので紹介したい。

「骨董の世界には、“目垢がつく”という独特な言い回しがあります。たくさんの人に見せすぎると、目垢がついてその品の価値が落ちてしまう。ですから茶会などでは、1点くらいは目垢のついていない、うぶな品があったほうが喜ばれます。

 ただし、大名物は別格。茶道具の名品のなかで、千利休が登場する前、特に足利義政の東山時代に名を馳せた茶器を大名物と言いますが、これはどれだけ目垢がついても価値は下がらない。お茶の世界は不思議なんです。

 また、骨董の世界では“眼福”という表現も用いられる。これは目の保養になるような素晴らしい品々に与えられる言葉で、“いい作品に出会えて眼福を得た”などと用いられます。今回の展覧会が来館者にとって、眼福のひとときとなりましたら幸いです」

 本展の出品作は“静嘉堂オールスター”といえるラインアップ。将軍家や大名家旧蔵の由緒ある茶入や名碗、千利休を筆頭に著名な茶人たちの眼にかなった風格あふれる名品がずらりと並ぶ。ただし、単に名品を揃えたというわけではない。静嘉堂の顔といえる国宝《曜変天目(稲葉天目)》などの「目垢はつき過ぎているが、やっぱり見たい」と思える名品はしっかりと抑えながらも、今回が初公開となる“うぶ”な品も含まれている。