唐物、高麗、樂、和物。名碗が勢揃い

「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」展示風景。重要文化財《油滴天目》 南宋時代(12〜13世紀)附:堆朱花卉天目台 

 では、本展の見どころをいくつか。見どころの1つめは「名碗の共演」。唐物、高麗、樂、和物と産地が多様で、それぞれの碗を見比べながら、個性や味わいを感じ取ることができる。

 重要文化財《油滴天目》は、唐物茶碗の最高位「曜変」に次ぐ高い評価を受けてきた天目茶碗。産地は福建省建陽市水吉鎮にある建窯で、油の滴が水面に細かく散ったような斑文があることから「油滴天目」と呼ばれている。油滴天目は複数の美術館が所蔵しているが、静嘉堂所蔵の茶碗は朝顔の花びらのように大きく外側に開いた形が独特。厚く掛けられた黒釉の上に銀色に輝く大粒の油滴斑がびっしりと浮き上がり、その神秘的な美しさに引き込まれてしまう。

「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」展示風景。重要文化財《井戸茶碗 越後》朝鮮時代(16世紀)

 高麗茶碗ファンなら、重要文化財《井戸茶碗 越後》と重要美術品《井戸茶碗 金地院》の並びに惚れ惚れ。「越後」は大井戸に分類される大振りの姿、枇杷色を呈する表面に細かく生じた貫入(ヒビ)、胴を巡る柔らかなろくろ目が特徴。大きく割れを繕った痕が残るが、それも歴史を感じさせる味わい深い景色になっている。

「金地院」も大井戸に属する茶碗で、サイズは「越後」よりも大きいが、むしろおとなしく品のいい作行き。淡い枇杷色の釉が優美な雰囲気を醸し出している。ちなみに「金地院」という呼び名は、京都南禅寺の塔頭金地院の什物であったという伝承による。