狩野派絵師が継承した「猿曳棚」

「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」展示風景

 3つめの見どころは「猿曳棚4点」。猿曳棚とは茶の湯で使われる紹鴎棚の形式にも近い大棚で、小さな引戸が付いた地袋が備えられている。この引戸に猿曳(猿回し)の絵が描かれていることから、猿曳棚と呼ばれるようになった。

 展覧会では静嘉堂が所蔵する猿曳棚4点を一挙公開。古田織部と小堀遠州に学んだ茶人・清水道閑(伊達家・茶道頭)が代々に伝えた。本歌となる最初の猿曳棚の板戸絵は狩野元信が描いたと考えられている。その後、数度にわたって写しが制作され、板戸絵は狩野派の絵師が担当するのがならわしであった。

「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」展示風景。猿曳棚(写) 引戸板絵=伝橋本雅邦 明治時代(19世紀)

 本展が初公開となる明治時代制作の猿曳棚は、狩野派の絵師・橋本雅邦の筆による可能性が高い。「作品そのものは小型で絵師の個性が見極めにくいことや、落款に比較材料がないことから雅邦作であるとの確証にはいたっていません。でも、雅邦の弟子・桃澤如水がこの棚を雅邦作として大切に所持してきたことなどから、雅邦作である可能性はかなり高いと思います」(安村敏信館長)

 国宝指定の名碗から初公開の猿曳棚まで、静嘉堂の奥深さと底力を感じる茶道具展。あおるつもりはないが、「眼福」を得られる稀有な機会だと思う。

特別展「眼福―大名家旧蔵、静嘉堂茶道具の粋」
会期:開催中~2024年11月14日(月・振休)
会場:静嘉堂@丸の内
開館時間:10:00~17:00(毎週土曜日は〜18:00、第4水曜日、9月25日、10月23日は〜20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)(ただし9月16日、9月23日、10月14日、11月4日は開館)
※10月28日はトークフリーデーで開館
お問い合わせ:ハローダイヤル 050-5541-8600