消費増税も「内輪の論理」と「力技」で押し切った

 昭和末期に消費税を導入した竹下政権は、政治腐敗にまみれ私腹を肥やしたと見られながら消費税創設を通じて国民負担を増やしたことから厳しい批判にさらされ、後の自民党下野の契機を作ったといわれている。

 初めての政権交代を実現した細川政権も同様の問題に直面した。細川政権は消費税への批判を受けて、一般財源としての消費税ではなく、国民への還元に重点を置いた福祉目的税(「国民福祉税」)を構想したが、首相本人の政治とカネの問題とも相まって、短命政権の要因となったと指摘されている。

 まだある。2010年には、前年の総選挙で300議席を超える大勝利を収めた民主党が政権交代を果たし、鳩山政権が誕生した。しかし、鳩山政権は不安定な答弁や基地問題での批判を受けて短命に終わる。その後誕生した菅政権は、2010年参院選直前に消費税率引き上げに言及して大敗を喫することとなった。

 ところが読者諸兄姉の記憶にも新しいところかもしれないが、これだけ政治的に難しい主題と考えられてきた消費税率の引き上げを安倍政権のもとでは5%から8%へ、8%から10%へと2度も実現し、国政選挙でも勝ち続けたのである。

 アベノミクスで主張した上げ潮政策と相性が悪いと支持層からも強い批判を受けたが、断行した。政策の合理性や効果ではなく、財政再建に関心を示す麻生副総理との関係など別の理由が囁かれている。

 このように、消費税率の引き上げという政策は、その内容や目的にかかわらず、政治的に非常に扱いづらい課題であり続けてきたにもかかわらず、政策が中身だけでなく、その提案のタイミングや政党内/政治家間力学、社会の受け止め方が大きく影響していることが示唆される。換言すれば、消費税率引き上げ(あるいは据え置き)のような重要政策でさえ、「公のため」という建前すら放棄され、内輪の論理と力技で押し切られてしまうのが日本社会である。