売れ残ったインディカ米…「平成のコメ騒動」の教訓
日本の食料備蓄は国家政策として展開されています。根拠となるのは「農政の憲法」と呼ばれる食料・農業・農村基本法。その第2条2項は、次のように規定しています。
「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行わなければならない」
つまり、「国内の農産品生産の増大」「輸入」「備蓄」の3本柱を適切に組み合わせながら、食料の安定供給を果たしていくという内容です。このうち農産物の備蓄は、コメと外国産の食用小麦、トウモロコシなどの飼料用穀物が対象。備蓄量の目安は次の通りとなっています。
政府備蓄米の制度は1993年に起きた「平成のコメ騒動」をきっかけとして生まれました。この年、日本は深刻な米不足に陥ります。生産量は前年より4分の1も落ち込み、979万3000トン。同年のコメ作況指数は74という「著しい不良」。80年ぶりの大冷夏が原因とされました。そのうえ、前年までの不作によって在庫量も少なくなっており、店頭からコメが消えたのです。
政府は外国からの緊急輸入で急場をしのごうとしましたが、日本人の口に合うコメを作っていた国はほとんどありません。中国(108万トン)やタイ(77万トン)、米国(55万トン)など各国から輸入したコメの多くは、長粒のインディカ米でした。消費者からは「まずい」「炊飯器でちゃんと炊けない」などと不評の声が止まらず、結局、90万トン以上が売れ残ってしまいました。そして、これを教訓として政府備蓄米の制度を採り入れたのです。