
2013年、三井化学は世界22カ国でビジネスを展開する欧州企業の一事業を買収するM&Aを敢行した。当プロジェクトの人事責任者を務めた同社の小野真吾氏は、相手企業が有するファイナンス、人事、法務といったコーポレート機能の「重厚さ」を目の当たりにし、「事業の成功を左右する大きな要因はコーポレート機能」だと痛感したという。その後、三井化学はグローバル人事改革に着手し、小野氏はその施策をけん引した。世界でビジネスを展開する日本企業が目指すべき人事制度とは。年功序列などの日本的慣習にはどう向き合うべきか。経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会」の座長を務めた日置圭介氏と小野氏が意見を交わした
「HRの複雑性」が急激に増した、三井化学の転機
――三井化学では数年がかりでグローバル共通の人事管理システムを導入し、全世界の約130に及ぶグループ会社を統合したタレントマネジメントを実現しています。どのような背景からこの取り組みを行ったのでしょうか。
小野真吾氏(以下敬称略) 当社では長らくビジネスモデルやポートフォリオの変革に取り組んでおり、それらをけん引するチームの構築や育成・採用の強化などが必要でした。そのためには、グローバルで一元化したタレントマネジメントを実現し、全世界の従業員を可視化することが不可欠だったのです。こうした考えが根底にあり、グローバルでの人事改革が始まったといえます。

日置圭介氏(以下敬称略) 世界各国に拠点を持つ日本企業にとって、コーポレート機能をグローバルで一元化する重要性は増しています。多いのはファイナンスから着手するパターンであり、三井化学のように人事領域で実践する企業はまだまれでしょう。なぜならファイナンスに比べて「人」をグローバルでマネージするのは多くの困難が伴うからです。