
三井化学では、国内外のグループ約130社の人事データを統合したプラットフォームを導入した。対応した各国子会社にとっては、慣れ親しんだ従来の人事システムからの変更が必要となるため、反発が起きる可能性もあった。だからこそ同社では、現場が納得する「使いやすいシステムの提供」を目指し、プラットフォーム開発の組織体制から工夫を凝らした。取り組みを率いた三井化学の小野真吾氏と、経済産業省による「グローバル競争力強化に向けたCX研究会」の座長を務めた日置圭介氏が語り合った。
「包摂的タレントマネジメント」の基盤として
――三井化学が導入した人材プラットフォームとはどのようなものでしょうか。
小野真吾氏(以下敬称略) 国内外のグループ約2万人の従業員がどこでどのような業務を行っているのか、これまでの実績やキャリア、評価はどのようなものか、こうしたデータを一元的に見られるシステムです。
当社は2008年のリーマン・ショックを機に、ビジネスモデルや事業ポートフォリオの変革を進めてきました。海外M&Aも頻繁に行う中で、グローバル一体の人事戦略を行う必要性が生じたのです。そこで2022年度から「包摂的タレントマネジメント」を開始し、グループ全従業員の能力を最大限発揮するタレントマネジメントを実現しようとしています。
キーワードは「全員戦力化」です。現代は1人のリーダーが全ての答えを持っている時代ではありません。世界各国の拠点にいる一人一人に目を配り、それぞれの技術やインテリジェンスを把握する必要があります。その実現のためにこのプラットフォームが必要でした。

――グローバル2万人の人事データを統合するのは、困難な作業だったのではないでしょうか。