NPBでは今年から12球団で「ホークアイ」を導入しているが「スタットキャスト」のようなシステムは構築されていない。また選手のデータはほとんど公開されていない。

 しかしMLBでは選手の投打守備のパフォーマンスは、すべて数値化されている。また一部は公開されている。選手のポテンシャルは、詳細なデータによって丸裸になっていると言ってよい。

 打者の場合、MLB公式サイトのSTATS(統計)から「スタットキャスト」というサイトに飛ぶことができる。ここには打者の「スイングスピード」と「角度」に関するデータがランキングされている。

打撃成績を決定づける「打球速度」と「打球の角度」

 今のMLBの「打撃理論」は極めてシンプルだ。バットを可能な限り速く振って打球速度の速い打球を、一定の角度で打ち上げる。それだけだ。

 打球速度が速ければ、大きな飛距離の打球を打つことができる。本塁打になりやすい打球角度を「バレルゾーン」という。打球速度が158km/hだと26~30°となるが、打球速度が上がると「バレルゾーン」は広くなっていく。多少弾道が低くても、打球速度が速ければホームランになるのは「バレルゾーン」が広くなるからだ。

 とにかく速いスイングで「打ち上げる」ことが大事。これが「フライボール革命」の肝だ。そのうえで「コンタクト率」と「選球眼」を磨くことが必要だ。

 今や、ゴロやライナーを打って安打を稼ぐような打撃は、ほとんど評価されていない。

「スタットキャスト」には、いくつものデータが並んでいるが、最も重要なのが「Exit Velocity(打球速度)」だ。

 2024年の「Exit Velocity」の、大谷翔平のMLB両リーグ打者中のランキングはこうなっている。

【MAX(最高速)】
クルーズ(パイレーツ) 121.5MPH(195.5km/h)
スタントン(ヤンキース) 120.0MPH(193.1km/h)
大谷翔平(ドジャース) 119.2MPH(191.8km/h)
コントレラス(ブリュワーズ) 118.1MPH(190.1km/h)
ゲレーロ(ブルージェイズ) 117.6MPH(189.3km/h)

【EV50(上位50本の平均)】
スタントン(ヤンキース) 108.1MPH(174km/h)
クルーズ(パイレーツ) 107.2MPH(172.5km/h)
ジャッジ(ヤンキース) 106.9MPH(172km/h)
大谷翔平(ドジャース) 106.4MPH(171.2km/h)
ゲレーロ(ブルージェイズ) 106.0MPH(170.6km/h)

 大谷は打球速度の最高速でも、上位50本の平均でも約250人いる「規定以上の打撃数」の選手のベスト5に入っている。ヤンキースのアーロン・ジャッジ、ファン・ソト、ジャンカルロ・スタントンとともに「常連」という感じだ。