小選挙区制導入後に現実のものとなった「懸念」

 小選挙区制の導入にあたっては、

・1選挙区の当選者が1人のため大量の死票が出る
・1票の格差が拡大する
・利益誘導が起きやすい
・公認権決定者の権力が絶大になる
・中小政党が埋没してしまう
・一党独裁につながる恐れがある

 など、当時からこうした批判がつきまとい、当時筆者が編集記者として在籍していた「日刊ゲンダイ」でも連日反対キャンペーン記事を掲載していたものである。

 そして、小選挙区制導入後、多くの懸念、警告が現実のものとなった。単純に中選挙区制に戻せばいいという話ではないが、30年間で判明した弊害をどうやって取り除いていくのか。手をこまねいている場合ではない。

 先に触れたが、2020年以降自民党議員が13人も東京地検特捜部に起訴されている。ここで「政治」と「政治家」双方の改革に本格的に着手しなければ、不祥事が繰り返され、国民への裏切り行為が止まらなくなる。

「政治改革」「政治家改革」「選挙制度見直し」は、今後の日本政治の歴史的転換点となるべきテーマである。総裁選に立候補した面々がそれぞれの考え方を披露して、とことん議論してもらいたいものである。

自民党本部の外壁に掲げられた総裁選の横断幕自民党本部の外壁に掲げられた総裁選の横断幕(写真:共同通信社)

【山田 稔(やまだ・みのる)】
ジャーナリスト。1960年長野県生まれ。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。主に経済、社会、地方関連記事を執筆している。著書は『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』『分煙社会のススメ。』など。最新刊に『60歳からの山と温泉』がある。東洋経済オンラインアワード2021ソーシャルインパクト賞受賞。