父から子へと続く調教師や騎手の家系

 コントレイルを調教師として三冠馬へと導いたのが、現在も中央競馬で大活躍の矢作芳人(やはぎよしと)です。矢作調教師の父もまた、かつて大井競馬場に所属していた調教師・矢作和人であり、全国公営競馬調教師会連合会会長を長く務めた人物でした。このように公営競馬、中央競馬に限らず、親子・親族で騎手や調教師になるケースは数多くあります。

 中央競馬で特に広く知られているのは武ファミリーでしょう。武豊騎手の父・邦彦は「名人」と称せられた騎手でしたし(引退後は調教師)、弟・幸四郎も騎手・調教師の道を歩み、祖父も曽祖父も牧場や馬術と関わりのある家系でした。

 また、現役の岩田康誠(やすなり)騎手は息子の岩田望来(みらい)騎手と同じレースに騎乗することは頻繁にありますし、今年、ダノンデサイルでダービー3勝目を挙げた横山典弘騎手を取り巻く横山ファミリーも有名で、父・富雄、兄・賀一、長男・和生、三男・武史も騎手として活躍(父、兄はすでに引退)しているほか、親族にも騎手・調教師がいます。

 競走馬を扱うという特殊な職業に従事する調教師・調教助手・厩務員さんたちは厩舎を中心とする生活圏で一日の大半を過ごしています。

 都会のマンションに住む一般的なサラリーマン家族とは異なり、そうした共同体は、家族同士のつながりが深く、やがて子供たちは長じて同じ社会、つまり厩舎村という世界で生きていくことが自然の流れであるかのように、競馬社会へと溶け込んでいくことになります。父から子へと続く調教師や騎手の家系もこうして築かれたものでしょう。