シャネルのジャケットは本当に返却したのか

 金正淑夫人に関してはもうひとつ、シャネルから協賛を受けた衣装を返さなかったという疑惑があり、こちらも検察の捜査が進行中だ。文大統領の在任期間中、豪華な衣装を披露した金夫人に対しては「国民の税金である大統領府特殊活動費を個人の衣装費として私的使用している」という疑惑が浮上していた。

 その中で特に注目を浴びたのが、2018年10月、フランス国賓訪問時に着用したハングルが描かれた高価な「シャネル」ジャケットである。金夫人側は「ジャケットはシャネルからの協賛品でシャネルに返却した」と釈明していたが、2021年になってシャネル側はこれを国立ハングル博物館に寄贈した。

 だが、メディアが調べた結果、国立ハングル博物館に展示されているシャネルのジャケットは、金夫人が着たジャケットとはサイズや模様が違うことが明らかになった。金夫人がシャネルに返却していなかった可能性、そして虚偽の説明をしていた可能性が高まり、市民団体と国民の力から告発された。

 このように、前大統領夫妻に対する検察の捜査が迫っている中で、野党は「政治報復だ」と批判し、与党は「正当な捜査だ」と強調するなど、韓国政界が緊迫している。政権交代が起こるたびに大統領経験者とその家族が逮捕されるという韓国政界の負の連鎖はまだ続くのだろうか。