科学は常に進む、新たな知見を取り入れ、想定は絶えず見直しを

――強い揺れの科学がそれだけ進歩したのに、2024年1月の能登半島地震の際、北陸電力の志賀原発では一部の周期で想定を超える揺れだったそうです。今でも「想定超え」が起きるのはなぜなのでしょうか。

入倉 私がまだ大学院生、助手だった時代に、教授のところに電力会社が原発のことでアドバイスをもらいにきていました。でも今思えば、そのころの科学の知識では、助言できるような内容はあまり無かったのではないかと思います。

 原発は、強い揺れのことについて知識が限られていた時代に設計されたものがほとんどです。新潟県中越沖地震(2007年、M6.8)で、東京電力の柏崎刈羽原発(1号機の設置許可申請は1975年)も、想定を大きく超える揺れに襲われました。原発は、想定される揺れに加えて、工学的な安全策として建築基準法が求める3倍の揺れにも備えていましたから、そちらの余裕のおかげで助かったと考えられています。

 強い揺れについての科学は、今も進化を続けています。熊本地震(2016年)では、充実した観測網のおかげで、活断層の直近の揺れのデータをとることができて、新しいことがわかってきました。

 そんな知見を取り入れて、揺れの想定は何回でもやり直すべきです。一般の防災計画でもそうです。役所はどうしても過去の想定との連続性を気にしますが、新しく観測された記録や、新しい理論でどんどん見直していくべきです。大家の先生の権威や意見に引きずられて見直ししにくい、変えにくいなんてことがあってはいけません。

 地震を起こす活断層がどんな形状で地下に潜んでいるのか、地盤の状態はどうなのかなど、地面の下の様子は、わかっていないことがまだ多いです。地下構造の調査技術をもっと進化させて、揺れの予測もそれを取り入れて発展させていく必要があるでしょう。