男女差別問題は1976年にも起きた。今度は法律家の育成機関である最高裁司法研修所の幹部たちが、女性の司法修習生に対し、こんな心ない言葉を浴びせた。

「女性は裁判に向いていない」「裁判官や弁護士になることは考えず、家庭に入って良い妻になるほうがいい」「男が生命をかける司法界に女が進出するのは許せない」

 女性の人権を無視した発言だった。この話を当事者の女性司法修習生から直接報告された嘉子さんは激高した。

 嘉子さん以外の女性法律家たちも憤怒した。100人を超える女性弁護士たちが日本弁護士連合会(日弁連)と衆院法務委員会に事実関係の究明を申し入れた。司法研修所の幹部たちは嘉子さんが動く前に事実上更迭された。

クレームを恐れない脚本家と制作スタッフの覚悟

 物語の中盤では男女差別以外の問題が描かれた。無実の朝鮮人を放火犯として起訴してしまった問題(第87回)、同性愛と性同一性障害の問題(第103回)、夫婦別姓問題(第105回)。

朝ドラ「虎に翼」公式Xより
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 朝ドラには牧歌的作品もあるが、このドラマはコンテンポラリーなエピソードが並び、刺激的だった。TBSには「ドラマはジャーナリズム」という言葉があるが、このドラマはまさにそうで、観る側に社会を考えさせた。

「政治的だ」という批判もあった。平素の朝ドラは「絶賛以外は認めない」という同調圧力が感じられるから、批判があるのはむしろ健全だった。しかし、このドラマが政治的かというと、そうとは思えない。