寅子による秋山の支援に全面協力したのは母校・明律大法学部の仲間たちである。同級生で弁護士の山田よね(土居志央梨)、同じく轟太一(戸塚純貴)、先輩で検事の中山千春(安藤輪子)らだ。

 産前産後休暇の長期化や育児中の時短勤務などを求める署名を、最高裁事務総局あてに書いた。東京地裁所長の桂場等一郎(松山ケンイチ)も根回しをしてくれた。やたら現実味のある話だった。これに近い話は現代の職場にもあるだろう。

朝ドラ「虎に翼」公式Xより
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 男女差別は最終回までにまだ描かれるのではないか。多すぎるということはないだろう。日本の男女差別は今も深刻なのだから。賃金だけ比較しても女性は男性より約3割も少ない(今年1月、厚生労働省調べ)

今では考えられないような女性差別が法曹界でも実際に

 寅子のモデルである三淵嘉子さんの関係した男女差別が1970年代に立て続けに起きたという事情もある。同年、最高裁人事局長がこう発言し、物議を醸す。

「最高裁は女性を採用しないことはないが、歓迎しない」

 人事局長は生理休暇が迷惑であるとの発言もした。嘉子さんたちは女性の権利確立に向けて力を注いできたが、時計の針が戻されてしまったのである。

 嘉子さんは副会長を務めていた日本婦人法律家協会(現・日本女性法律家協会)を通じて人事局長に抗議した。「女性への侮辱で、司法に対する信頼を失わせる」。この団体は裁判官、検察、弁護士のオール法律家の女性たちで組織されていた。嘉子さんは身内である裁判所内で起きた問題にも遠慮しなかった。だから尊敬された。