ロシアの「世界第2の軍事力」という虚像は崩れた

――ウクライナとその国民にとって大きな賭けになります。ゼレンスキー大統領の胸中をどう読みますか。

ロペス ウクライナ北東部の都市ハルキウ市へのFAB(滑空爆弾)攻撃を止めるためにウクライナ軍がロシア領内の奥深くにあるロシア軍の戦術航空部隊、長距離爆撃機、後方の兵站地域を攻撃するのに、米国とドイツが提供した長距離兵器を使うことを両国は許さなかった。

 ゼレンスキー大統領の命令は明確だった。「国境を越えて、これらの目標を攻撃せよ」「ロシア領内に戦術的な機動作戦基地を構築せよ」。この戦略は西側諸国には知らされておらず、それゆえロシア軍に壊滅的な打撃を加える統合作戦となった。 

――米国のカマラ・ハリス副大統領(民主党)とドナルド・トランプ前大統領(共和党)のどちらが大統領になっても年内にウクライナ戦争の和平交渉が始まると思いますか。

マーク・ロペス氏(Zoom画面のスクリーンショット)

ロペス ウクライナのロシア侵攻が成功し、ロシア領内で作戦が継続されている限り、和平交渉はない。ウクライナ軍がさらに領土を奪うか、ロシア兵を捕獲すれば話は別だが……。

――米国とドイツは長距離兵器を使ったロシア領内への攻撃などの問題でゼレンスキー大統領と一定の距離を置いているように見えますが。

ロペス 米国とドイツはエスカレーション・カード(戦争の拡大と核戦争へのエスカレーションを防ぐこと)を使い続けている。これは誤った無駄な議論だ。

 ウラジーミル・プーチン露大統領が恐れているのは、ウクライナの力の誇示だけだ。ロシア軍は世界第2の軍事力を持つ軍隊という虚像は破壊された。米国とドイツは、ロシアがもはや優位に立っていないことを認識しなければならない。

 エスカレーションに対する懸念は日に日に説得力を失いつつある。米国とドイツは戦争のシナリオとテンポをコントロールしようとしている。どちらの国の軍隊もウクライナには展開していない。

 今や、ウクライナ軍が戦術的テンポを支配している。ロシア領内の奥深くまで攻撃するため、より多くの兵器が生産されている。エスカレーションへの懸念はこの戦争で現実味を失っている。