原油価格を高騰させる可能性はいろいろあるが・・・

 OPECではイラクが減産する意向を示している。今年1月から7月にかけて、OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)と合意した生産枠を超過したことを踏まえ、9月の生産量を日量385万~390万バレルに減少させる計画を提示した。

 OPECプラスではカザフスタンも生産枠の超過分を解消する計画を示している。

 ロシアは相変わらずウクライナ軍のドローン攻撃に悩まされている。26日、28日、29日と連日のように各地の石油関連施設で火災が発生している。

ウクライナのドローン攻撃で炎上するロシアの石油貯蔵タンク=2024年6月(提供:Russian Emergency Ministry Press Service/AP/アフロ)

 ロシア政府は28日、「石油製品生産に関する統計の公表を停止する」と発表した。ガソリンについては5月末に生産統計の発表を停止しており、今回の対象はディーゼル燃料や暖房用重油などだ。

 8月末のロシアのガソリン価格は1月よりも6%以上上昇しており、石油生産の生産能力が打撃を受けているのは間違いないだろう。

 欧州の産油国ノルウエーの地政学リスクも問題になっている。欧州の安全保障当局は26日、「ノルウエーの原油部門はロシアの脅威にさらされている」との危機感を共有した。

 イエメンの親イラン武装組織フーシ派の動きもとどまる気配はない。

 フーシ派は22日、「ギリシャ船籍の石油タンカー『スニオン』を攻撃した」ことを明らかにした。スニオンは約100万バレルの原油を運んでいたが、周辺海域への原油の流出は今のところ確認されていない。

 フーシ派は昨年11月以降、70回以上にわたって紅海を航行する民間商業船への攻撃を繰り返してきた。これまでに船2隻が沈没し、少なくとも3人の乗組員が犠牲となっている。今後も攻撃を続行するとの方針を変更していない。

 このように、世界の原油供給が減少する兆しが見えているのに、原油価格は80ドルを超える状況になっていない。市場関係者の見通しも弱気ムードだ。

 なぜだろうか。