- 米国の景気不安をきっかけにした世界同時株安の影響で、原油価格も乱高下した。
- さらなる懸念はイランのイスラエルに対する報復攻撃だが、戦火が拡大しないように各国はイランに抑制的な対応を強く求めている。
- 報復攻撃が実施されたら原油価格はどうなるか。産油国が紛争に巻き込まれるかが、大きなカギを握る。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は先週に続き乱高下した。
8月5日、米国発世界同時株安の影響で原油価格は一時、1バレル=71.67ドルと2月上旬以来の安値を付けた。その後、75ドル台に上昇している。
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まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
ブルームバーグによれば、石油輸出国機構(OPEC)の7月の原油生産量は前月比6万バレル減の日量2699万バレルだった。中国の需要が減少したため、ベネズエラとイランが原油生産量を減らした。一方、イラクとアラブ首長国連邦(UAE)は決められた生産目標を超過している。
OPECとロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは現在、日量586万バレルの減産を実施しているが、その取り組みに水を差しているのが米国だ。
直近の原油生産量は日量1340万バレルと過去最高水準を更新した。シェールオイルの増産のペースが加速するとの指摘も出ている*1。
*1:U.S. Shale Production Could Surprise to the Upside(8月5日付、OILPRICE)
米国の原油在庫は6週連続で減少している。だが、ガソリン需要は日量911万バレルに減少するなど夏場のドライブシーズンの終わりが近づいている。
米国経済の景気後退(リセッション)への警戒感も生じており、原油在庫は増加に転ずるのは時間の問題だろう。
需要面で市場が最も注目しているのは中国の動向だ。