- イランによるイスラエル報復に対する警戒感が高まっているが、いまのところ原油価格は落ち着いている。
- 筆者は、イランによるイスラエル攻撃は米国を巻き込まない程度の抑制的なものとなり、原油価格を急騰させるリスクは他にあると見ている。
- サウジアラビアと親イラン武装組織フーシ派の間の緊張が高まっており、両者が直接の戦火を交えることになれば、中東からの原油供給懸念が一気に現実のものとなる。(JBpress)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=76ドルから80ドルの間で推移している。「イランがイスラエルに報復攻撃を実施する」との観測から8月12日の原油価格は1バレル=80.96ドルと3週間ぶりの高値となったが、その後、下落が続いている。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
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石油輸出国機構(OPEC)は12日に発表した月報で「今年の世界の原油需要は前年に比べて日量211万バレル増加する」とし、7月の予測(日量225万バレル増加)を下方修正した。中国の需要の増加ペースが弱まるなど上半期の実績が予想を下回ったことを理由に挙げている。来年の原油需要も日量178万バレル増と、従来の日量185万バレル増から引き下げている。
国際エネルギー機関(IEA)の見方もOPECと同様だ。13日に発表した報告書で「中国の今年の原油需要を前年比30万バレル増の日量1680万バレル」とし、前月から同20万バレル下方修正した。建設・製造業の低迷やガソリン燃料を使わない自動車の利用拡大などがその要因だ。
中国に加えて米国の原油需要も思わしくない。