- ハマスの最高指導者ハニヤ氏がイランで殺害されたことを受けて、イランがイスラエルに報復攻撃を仕掛ける懸念が高まっている。
- 気がかりなのはイランがホルムズ海峡を封鎖する可能性だ。日本は原油の約8〜9割を中東から輸入しており、そのほとんどがホルムズ海峡を経由しているからだ。
- 政策アナリストの石川和男氏は「日本は危機感が足りない」と警鐘を鳴らす。有事に備え、米国から原油を調達する長期契約を結ぶべきだと説く。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
ホルムズ海峡封鎖への危機感が足りない
──日本は原油の中東依存度が高いですが、イランがイスラエルに報復攻撃を仕掛ける可能性が高まっているいま、日本にはどのようなリスクがありますか。
石川和男氏(以下、敬称略):日本は原油を中東に依存しているのは確かですが、イランからは今のところ輸入していません。「中東依存度が高い」という表現は、サウジアラビアをはじめとした産油国の原油を「ホルムズ海峡経由」で輸入しているという意味なのです。つまり、イランがイスラエルに対する報復の一環でホルムズ海峡を封鎖した場合、日本への原油輸送がストップする可能性があります。
イランが実際にホルムズ海峡を封鎖するかどうかは何とも言えません。ただ、日本人や日本政府が「どうせ今度もまたイランお得意の“やるやる詐欺”でしょ」と思っていたとしたら大問題でしょう。
イランのイスラエルへの報復はこれまで、アメリカの参戦を恐れて抑制的なものに終始してきました。ただ、イラン情勢は常に変化していますし、ホルムズ海峡を封鎖する可能性もゼロとは言えない。ホルムズ海峡というシーレーン(海上交通路)に依存する日本のエネルギー政策は脆弱な基盤の上に成り立っているということを忘れてはいけません。
日本は停電・停ガスがほとんどないので危機感が醸成されないのも無理はないのかもしれません。とはいえ、脱炭素の流れのなかで石炭火力発電が敵視され、原発の再稼働のめども立たない日本は、中東情勢のあおりをダイレクトに受けます。ホルムズ海峡が封鎖された場合のシミュレーションをしっかりとしておく必要があるのです。
では、ホルムズ海峡の危機を回避するためにはどうすればいいのか。2つの方法が考えられます。