トランプ氏とハリス氏は石油政策で対照的な立場をとる(写真:Jakub Porzycki/NurPhoto/共同通信イメージズ)
  • 原油価格が大幅に下落している。引き金は中国人民銀行による5カ月ぶりの利下げだ。
  • 景気刺激を狙ったものの、市場では原油需要に対する懸念払拭には不十分との認識が広がった。
  • 市場は弱含みだが、イスラム武装組織フーシ派が不穏な動きを強めており、中東情勢には警戒を緩めてはならない。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=77ドルから78ドルの間で推移している。先週に比べて大幅に下落し、約1カ月半ぶりの安値となっている。

「中東地域の紛争が薄らぐ」との期待が高まっている上に、中国の原油需要に対する懸念も広がっていることが主な要因だ。

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 ロシアの石油大手ロスネフチのトウアプセ製油所が7月22日、ウクライナのドローンによる大規模攻撃を受けた。黒海に面する同製油所の原油処理能力は日量24万バレル。火災が発生したが、被害の程度は不明だ。トウアプセ製油所は5月17日も攻撃を受けており、繰り返しウクライナのドローン攻撃の標的となっている。

 ウクライナの度重なる攻撃はロシアのガソリンなどの石油製品の供給に打撃を与えていることは間違いないだろう。

 ロシアは8月1日からガソリンの輸出禁止を実施する。足元の価格高騰を抑制するため、今年3月から5月末にかけて講じていた措置を復活せざるを得なかったようだ。

 米国では原油、ガソリン在庫ともに減少した。

 11月の大統領選ではトランプ氏とハリス氏が対決する構図となった。石油を掘りまくれというトランプ氏に対し、ハリス氏は環境への影響などから石油業界に厳しい姿勢で対峙してきた。両氏が対照的な石油政策を掲げていることから、市場は今のところ静観の構えだ。

 カナダでは原油の主要産地であるアラバータ州で大規模な山火事が広がっており、「事態が悪化すれば原油供給に影響が出る」と警戒されている。

 供給面からの原油価格の上昇要因が出ているが、市場はほとんど反応しなかった。

 市場が注目したのは、22日の中国人民銀行(中央銀行)の5カ月ぶりの利下げだった。