- 原油需要のピークアウトが2025年にも訪れるとの見方が出ている。需給で見れば原油価格は今年下期から下落トレンドに入る可能性が高い。
- ただし、波乱要因が2つある。イスラム武装組織フーシ派がサウジアラビアを攻撃する可能性と、改革派が大統領に選ばれたイランの内政が混乱に陥る可能性だ。
- 足元では地政学リスクは原油価格に大きな影響を及ぼしていないが、注意が必要だ。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=81ドルから83ドル台の間で推移している。先週に比べて価格のレンジが1ドルほど下方に推移している。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスの主要メンバーであるイラクとカザフスタン、ロシアは減産目標を上回る生産を続けている。
OPECが7月10日に公表した月報によれば、ロシアは6月に減産を実施したものの、3カ国全体で年初に設定された割当量を日量数十万バレル上回る供給を続けている。
このこともあって、OPECプラスが望む水準にまで原油価格は上昇していない。
国際通貨基金(IMF)によれば、減産を主導しているサウジアラビアは大規模な政府支出を賄うために1バレル=100ドル近い原油価格を必要としている。
OPECプラスは今年10月以降、徐々に増産することを計画している。原油価格が伸び悩めば、OPECプラスの結束に亀裂が入る事態が想定される。
世界最大の原油産油国である米国では、ハリケーン「ベリル」がテキサス州に上陸したが、米国の原油生産への目立った影響はなかった。
直近の原油生産量は前週に比べて10万バレル増加し日量1330万バレルとなり、再び過去最高水準となっている。
需要面では主要機関の見通しの発表が相次いだ。