- ハマス最高指導者がイランで暗殺され、中東情勢が一気に緊迫してきた。原油価格が1バレル130ドルに上昇するとの見方も出ている。
- イランの報復は限定的と見られるが、戦争継続を狙うイスラエルのネタニヤフ政権は「さらなる爆弾」を仕掛けるかもしれない。
- シーア派やヒズボラなど親イランの「抵抗の枢軸」には連携する動きも見られ、戦火の拡大は避けられない情勢だ。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
今週の米WTI原油先物価格(原油価格)は乱高下した。中国の需要懸念から7月30日に1バレル=74.59ドルと6月上旬以来の安値を付けたが、その後、中東情勢の緊迫化から78ドル台に急上昇した。
まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは8月1日に合同閣僚監視委員会を開催し、10月以降、一部の減産を段階的に縮小する方針を改めて確認した。
OPECプラスは現在、正式な枠組みとしては来年末まで日量366万バレルの協調減産を実施している。さらに8カ国が同220万バレルの自主減産を行っているが、10月から来年9月にかけて段階的に縮小することを6月の会合で決定していた。
米国の原油生産量は日量1330万バレルと過去最高水準を維持している。
米国の原油在庫は5週連続で減少しており、その水準も6月に比べて2000万バレル以上低下しているが、今後、増加する可能性が指摘されている。
米国の原油生産の約半分を占めるテキサス州パーミアン盆地と主要な輸出港を結ぶパイプラインの稼働率が90%超とフル稼働状態になっている。稼働率はさらに上昇すると見込まれており、近い将来、輸出できない原油が米国内に滞留するのではないかと懸念されているのだ*1。
*1:米テキサスの原油パイプライン稼働率90%超、輸出の足かせになる恐れ(7月30日付、ブルームバーグ)
南米ではベネズエラの原油生産量が日量10万バレル以上減少するとの観測が生じている。大統領選で現職のマドウロ氏が再選を果たしたとされているが、選挙結果に反対する市民の暴動が続いており、米国が新たな制裁を科す可能性が高いというのがその理由だ。
需要面では世界第2位の原油需要国である中国が足を引っ張っている。