米国の成人1万人を対象にした調査とは?

 研究者らは米国の成人約1万人を対象に、2018年12月から2022年3月にかけて「クイズ」を実施するという大規模な調査を行った。そのクイズは、被験者に対して1カ月に1回、6本のニュース記事を読んでもらい、その中から真実だと思うものを選んでもらうという内容だった。

 もちろんそのニュース記事は、ネットから適当に集められたものではない。1回に提示される6本の記事のうち、3本が真実の記事で、3本がフェイク記事だった。

 その記事は米連邦政府に関する最近(提示される日の4週間以内)の出来事を対象としたもので、偽のニュース記事については、ファクトチェックサイトのSnopes.comから抽出されたもの、またはジャーナリストによって意図的に作成されたものが使用された。

 またクイズへの回答には時間制限が設けられ、被験者は通常、60秒以内に回答するよう求められた。その際、オンラインで情報を検索することは禁じられていた。

 それでは気になる結果だが、被験者は一般的に、自らの政治的信念と一致するニュース(彼らは事前に「共和党支持」「民主党支持」「無党派」といった政治的傾向を明らかにするよう指示されていた)の場合、それを真実と判断する確率が4%増加した。この結果を大きいと見るか小さいと見るかは微妙なところだが、少なくともやはり人間は、「自分の信じることが正しくあってほしい」と願ってしまうものなのだと言える。

 興味深いのはここからだ。前述のように、この実験は2018年12月からのおよそ3年間という長期にわたって行われたのだが、この期間中に大きな政治的イベントがあった。それは2020年の米大統領選挙である。実はこの期間中、自らの政治的信念と一致するニュースを真実と判断する確率が、通常の4%から11%へと大幅にアップしていたのである。

 通常よりも冷静な判断を行うべきである選挙期間中、逆に人々は、真実よりも党派性を優先する思考回路に陥ってしまいがちだったというわけだ。