(英エコノミスト誌 2024年8月24日号)
政治家の活動は選挙運動だけでは終わらない。政策をもっと詳しく論じる必要がある。
数週間前には、今年の民主党全国大会はお通夜のようになるのではと思われた。
いざ始まってみると、1960年代のヒッピーたちの愛の集会「ラブ・イン」を彷彿させる雰囲気になった。
新たな大統領指名候補が敗色濃厚だった党を救ってくれたという安心感が、代議員たちの喜びに趣を添えた。
人柄と生い立ちを前面に打ち出す選挙戦
カマラ・ハリス氏がこれを成し遂げたのは、彼女が「どんな人物か」というよりも「どんな人物でないか」による部分が大きい。
まず、ハリス氏はジョー・バイデン氏ではない。
バイデン氏はシカゴで開かれた党大会で告別演説を行い、年齢のせいで口やかましくなったことがあらわになった。
ハリス氏はドナルド・トランプ氏でもない。
バイデン大統領が選挙戦を降りた今、最年長の候補者はトランプ氏その人であり、ケチな侮辱やよからぬ考えへの執着で有権者離れを招いている。
しかし、ハリス氏にはそれ以外にも必要なことがある。
本誌エコノミストの予測モデルによれば、大統領選挙は五分五分の接戦になる。
民主党はハリス氏を国民が本当に投票したい候補者にするために、党大会で同氏の性格と生い立ちを前面に打ち出した。
今ではハリス氏がマクドナルドで働いていたことも、同氏の夫が初めてデートを申し込む時に残した冗漫な留守電を年に1度再生して夫をからかっていることも、米国民の知るところになっている。
残念ながら、これがハリス氏の政権運営にどうつながるかは不安を覚えるほど曖昧だ。
性格や人柄を軸に選挙戦を組み立てていることには理由がある。
政策論争を展開すると不利になる恐れがあること、トランプ氏が政策オタクでないこと、そしてトランプ氏が相手なら重要なのは性格や人柄であることなどが主なところだ。
しかし、心配なことにハリス氏の戦術はもっと根本的なことを示唆しているのかもしれない。