(英エコノミスト誌 2024年8月10日号)

英国では、イングランドの北西部の町サウスポートで3人の女の子が殺害されて以降、偽情報の拡散でデモや暴動が広がった(8月4日、写真:ロイター/アフロ)

暴力を振るう者は罰し、移民を擁護し、地域のサービスを向上させよ。

「厭わしい」は強い言葉だ。

 英国の市街地を汚している昨今の振る舞いに対して使う言葉としては、これでもまだ足りない。

 イングランド北西部の町サウスポートで3人の女の子が殺害された7月29日以降、イングランドと北アイルランドの町や都市で擁護できない反移民デモが起きている。

 モスクや警官が襲撃を受けた。

 イングランド北部のロザラムでは、あるホテルに亡命希望者が収容されていると思い込んで、そこに火をつけようとする者たちも現れた。

 街頭の暴徒はオンライン上で憎悪の扇動者からけしかけられている。

リベラルになる国で勃発した衝突

 第2次世界大戦以降で最悪の人種暴動は、新しい労働党政権が望んでいる再び安定する英国というイメージにほとんどそぐわない。

 英国を訪れる国民に注意を喚起する国も出てきている。

 イーロン・マスク氏――頭脳明晰に違いないのに、首をかしげたくなるような行動を絶えず繰り出してくる人物――は、自身が所有するソーシャルメディア・プラットフォームの「X」で「内戦は不可避だ」との見解を披露した。

 これは明らかな誤りだ。

 ここ数日間に現れたトラブルメーカーの多くは、革命理論の応用ではなく無思慮な暴力のスリルに引き寄せられてきた若者たちだ。

 多くの人には司法の抑止効果が効く。暴徒は集団でいる時はともかく、判事の前に引きずり出されると挑戦的な態度がかなり軟化する。

 極右が組織された政治勢力からまとまりの弱い集団へと変化した理由の一つは、英国がますますリベラルな国になっていることにある。

 極右のデモに対し、移民社会を支援する大規模な対抗デモが始まっている。

 真の英国人であるためには英国生まれであることが非常に重要だと言う人は今では17%にすぎず、1995年の48%から大幅に減少した。

 さらに先日の選挙では、不法移民を厳しく取り締まると訴えた与党が大敗北を喫している。