(英エコノミスト電子版 2024年7月31日付)

記者の質問に答えるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(8月2日カラカスで、写真:AP/アフロ)

平和的な抗議行動と賢明な外交がある程度の希望をもたらす。

 ある国が独裁国家に転落する過程では、重武装した体制側が何千万人もの国民に対し、黒を白として、悪を善として、そして敗者を勝者として受け入れるよう迫る瞬間が訪れる。

 ニコラス・マドゥロ大統領は7月28日に行われた大統領選挙をあまりにも露骨に盗むことによって、ベネズエラにとって今がその瞬間であることを確実にした。

数百万もの票の捏造で「勝利」を宣言

 どんな尺度で見ても、選挙はエドムンド・ゴンザレス候補の完勝だった。マドゥロ氏の勝利を主張しているのは体制側の集計だけだ。

 ゴンザレス候補は情け深い伯父のように若者に接する元外交官。

 一目置かれる野党指導者マリア・コリナ・マチャド氏の立候補がマドゥロ氏によって阻まれたため、反体制側は候補者をゴンザレス氏に一本化していた。

 出口調査や多くの投票所での独自集計はすべて、ゴンザレス氏が65%超の得票率で勝利したと報告している。

 ところが政権側の言いなりに動く選挙管理委員会は、謎めいた空白の時間を経て、マドゥロ氏が僅差で勝利したと発表した。

 権力を握ってからの11年間でマドゥロ氏はますます非民主的になっていった。

 今回は選挙の勝利を盗み取ろうと、体制側が何百万もの票を捏造した。詐欺の規模はベネズエラの過去のインチキ選挙を大きく上回る。

 ベネズエラは今や世界最貧国の一つに数えられ、2018年に選挙の敗者を勝者にするために数百万票が捏造されたコンゴ民主共和国を彷彿させる。

 コンゴの企みは成功した。マドゥロ氏の企みを成功させてはならない。