(英エコノミスト誌 2024年7月27日・8月3日合併号)
穀物、天然ガス、石油の備蓄急増は行く手のトラブルを告げている。
この20年間、中国は大変な量の原材料をむさぼり食ってきた。
人口が増えたうえに豊かになったことで、乳製品や穀物、食肉の需要が増えた。巨大な工業はエネルギーや金属を次から次へと欲しがった。
しかし、近年は政策の失敗と不動産危機のせいで景気が伸び悩んでいる。政府高官は資源集約的な工業から脱却したいと主張し続けている。
論理的に考えれば、中国のコモディティー(商品)需要は縮小している。それもハイペースで縮小しているはずだ。
景気低迷下で資源輸入が増加、背景に地政学的脅威への懸念
実際には、正反対のことが起きている。
中国では昨年、基本的な資源の多くで輸入が過去最高記録を更新し、コモディティー全体の輸入が数量ベースで16%増加した。
今年に入っても増え続けており、1~5月期には6%増えている。
景気が盛り上がっていないことを考えれば、これは消費の伸びを反映した現象ではない。どうやら中国は、各種の原材料の備蓄を急速に積み上げているようだ。
それもコモディティー価格が高いこの時期に、だ。
北京の政策立案者たちは新たな地政学的脅威について、なかでも特に米国でタカ派の新大統領が誕生し、中国に物資を送る重要な供給ルートをふさごうとするかもしれないことに不安を覚えているようだ。
不安になるのも無理はない。なぜなら、中国は外国の資源に依存しているからだ。
確かに、中国は多くの種類の金属について世界の精錬能力の中心地となっているが、必要な原材料の大部分を輸入しており、使用量に対する輸入量の割合はボーキサイトで70%、コバルトで97%にも上る。
中国が電気をつけていられるのは、ひとえに輸入エネルギーのおかげだ。
石炭は国内に豊富にあるものの、それ以外の燃料は国内産だけではニーズを満たすことができず、天然ガスは使用量の40%、原油は同70%をそれぞれ輸入せざるを得ない。
輸入への依存が最も深刻なのは食料だ。
2000年には、市民が口にする食べ物はほぼすべて国産だったが、今ではその割合が3分の2を下回る。
4億頭のブタの飼料として用いる大豆の量は年1億2500万トンに達し、その85%が輸入されている。
コーヒー、パーム油、そして一部の乳製品については外国の農家にほぼすべて依存している。