まず南海トラフ地震とは何だっけ

「南海トラフ地震」または「南海トラフ巨大地震」とは、東日本大震災後の2012年ごろから政府の文書に見られるようになった用語で、東海地震と東南海地震と南海地震という巨大地震をまとめた呼び方です。

 なお地震のエネルギーは「マグニチュード」という単位で表しますが、ここではマグニチュード8以上の地震を指して巨大地震と呼んでおきます。(記憶にも新しい2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」はマグニチュード7.5なので、巨大地震はあれよりも大きなエネルギーをもちます。)

 南海トラフとは、駿河湾から日向灘沖までつづく海底のくぼみです。ここでは、年に数センチメートルの速さでじりじりと南からやってきた「フィリピン海プレート」が、日本列島を載せた「ユーラシアプレート」の下に潜り込んでいます。

 地球表面のあちこちに、海洋プレートが大陸プレートにじりじり潜り込むところがあって、そこでは大小の地震が頻発します。南海トラフも例外ではなく、地震計の記録にも、古文書や歴史にも、地質学的証拠にも、地震がたくさんみつかります。

 文部科学省の「地震調査研究推進本部」によると、南海トラフを震源とする巨大地震は「これまで100〜150年の周期で」発生しており、「今後30年以内に発生する確率は70~80%」です(※1)。

(ちなみにこの地震調査研究推進本部は、前身を「地震予知推進本部」といって地震予知を担当する政府機関でしたが、1995年の阪神・淡路大震災を予知できなかったために改編されて、名前から「予知」が取れ、「地震に関する調査研究の成果を社会に伝え」る機関になりました。)

 落雷だとか交通事故だとか超新星爆発といった、たまに発生する現象の確率は、「ポアソン分布」という確率分布にしたがいます。地震調査研究推進本部の見積もりが正しいとして、南海トラフ巨大地震の発生確率をポアソン分布で計算すると、1週間という期間に発生する確率は0.08〜0.1%となります。