イタリアだけが持つ優位性

 第一に、地中海世界ではほぼ最大級の経済力を有することだ。

 EU加盟国のGDPは、ドイツが圧倒的に首位で、2位がフランスで3位がイタリアである。ただ、地中海世界で見ると、地中海に面している沿岸が多くないフランスを除くと最大級の経済圏だ。スペインはもちろんのこと、人口の多いトルコやエジプトよりもはるかに経済力が大きい。地中海世界では、それだけ経済的な牽引力があるのだ。

 第二に、地理的・歴史的に地中海世界の中心にあり、多くの文化や宗教が交錯したとことだ。

 そもそも、イタリアは地理的に地中海世界の中心に位置している。古代ローマ帝国時代からアフリカ大陸と数多くの交易を重ねてきた。イタリア半島はアフリカに突き出ており、シチリアからチュニジアまではフェリーで10時間程度である。

 このような地理的要因から、古来イタリアは、多くの文化、宗教が交錯してきた。冒頭でご紹介したシチリアは、まさにその文化・宗教の交錯する拠点であったのだ。200年間アラブの支配を受けたシチリアなども擁している。

 第三に、柔軟で寛大な国民性だ。

 イタリア人は、先述したナポリ人の特性がある意味典型と思われるが、ドイツやフランスと違い、あまりルールを細かく作ることを望まない、柔軟で寛大な国民性と言われる。

 ワインの格付けでも、法律で細かく格付け方法を決めるドイツやルールを規定しているフランスと違って、イタリアではルールによる格付けはあるものの、格付けにこだわらず良いワインは良いワインという見方がある。

 かつてローマ・カトリックが異端審問などで異端者を処刑した歴史やナチスと協力した歴史もあるので、寛大とは言い切れない面もあるであろう。しかし、それは過去の宗教上の教義の争いや帝国主義時代の産物としての歴史事実であり、現在の国民性とはやや関係が薄いと思う(もっとも、反移民の政治的動きは注視していくことは必要と考える)。

 柔軟で寛大な国民性は、アフリカ人との良好な関係でも意味を持つだろう。