地中海世界から見たイタリア

 我々は、イタリアをEUという枠組みで見てしまいがちだ。確かに、イタリアはEUの有力な経済大国であり、文化的にも欧州をけん引してきた国だが、EUの中でもイタリアは財政赤字やポピュリスト的な政治家の登場など、どことなくお荷物的なイメージもある。

 もっとも、北アフリカを含めた地中海世界の一員としてみると見え方が変わる。イタリアは、地中海世界の中核であり、今後、アフリカ大陸を結ぶハブともいえる位置付けだ。

 2024年になって、ロシア産天然ガスの輸入に代えるため、天然ガスのパイプラインをアルジェリアからイタリアを経てドイツまで輸入するプロジェクトが始まった。

 ドイツの大手EnBWの天然ガス輸入販売子会社フェアブントネッツ・ガス(VNG)と、アルジェリアの国営石油・ガス会社ソナトラックによるプロジェクトだ。アフリカ大陸と欧州をガスのパイプラインが結ぶのは史上初と言われる。

 パイプラインが経由するイタリアの地政学的地位が上がったのは間違いない。

 欧州と北アフリカは、文化的・宗教的な違いはあるが、地理的には近い。資源と(不法移民問題は避ける必要があるものの)若い労働力のある北アフリカをはじめとするアフリカ諸国は、高齢化が進む欧州にとって、中長期的に魅力あるビジネスパートナーになりうる。

 もっとも、地中海の人口約6000人のランペドゥーザ島には、1週間で1万人を優に超える移民が到着することもあるほど、アフリカからの移民が多数到着する。これら不法移民や難民の増大については、イタリア政府も頭を悩ませており、時に強い抗議運動も起きる。移民に対する反発が右派ポピュリズムの支持拡大に繋がっている点には留意が必要だ。

イタリア・ランペドゥーザ島に辿り着いた大量の移民(写真:AP/アフロ)イタリア・ランペドゥーザ島に辿り着いた大量の移民(写真:AP/アフロ)

 しかし、これらの点を考慮しても、イタリアが北アフリカを含む地中海全体のハブになる可能性はある。理由を整理すると次の3点だ。