オフィスに対する常識が変わった

 こうした事態は日本を含めオフィス業界に深刻な影響を及ぼしている。日本の不動産会社でも多くの米国商業用不動産に投資、保有をしている。その多くはやはりノンリコースローンで調達している現状からは、オフィス価値が暴落し、ローン金利が急伸する事態が続くことは、たとえテナントが埋まっていたとしても、利払いなどの費用が嵩んで、運営収支が赤字に陥る可能性が出てきているのだ。

 加えてリファイナンスでは相応の治癒(追加エクイティ出資など)を行わなければリファイナンスリスクをまともに被ることになる。

 特に根が深いのがオフィスというハコで働くという誰もが信じて疑わなかった働き方の常識が変わるという恐ろしさだ。

米・サンフランシスコで、無人状態のオフィスビル会議室(写真:ロイター/アフロ)米・サンフランシスコで、無人状態のオフィスビル会議室(写真:ロイター/アフロ)
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 日本では今でこそ、昭和型経営者がオフィスへの出社を促す。従順な従業員は裏で文句を言いながらも黙って従っている。だが今後社会の主力にZ世代が登場するようになると、オフィスというハコに興味を示すものは少数派になるかもしれない。

 米国発の商業用不動産暴落に伴う、日本を含めた世界中の金融機関の不良債権化問題は2008年とはまたひと味違う破綻を引き起こす可能性がある。

 既に中国不動産は大型倒産をなんとか官民一体となって食い止めている状況。香港でもオフィスの空室率は20%と底なしの状況になっている。

 さらに欧州でもドイツで不動産関連企業の倒産が1月から3月で630件と前年同期比30%増。今年2000件を超えるものと予測されている。

 オフィスは中長期にわたって常に安定的な収入を確保できる、と考えてきた不動産業界に米国発のオフィス不況が押し寄せてくるのは、オフィス投資に思い切り貸し込んでいた金融機関の破綻からだとしても不思議ではない。

 米国政策金利の引き下げに転じるのを心待ちにしながら、この状況をどのようにくいとめることができるか目を離せない状況が続いている。