夏休みの宿題は計画的に(写真:f.t.Photographer /Shutterstock.com)夏休みの宿題は計画的に(写真:f.t.Photographer /Shutterstock.com)
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 お盆が過ぎ、子どもたちの夏休みもあっというまに後半戦だ。夏の終わりに宿題に焦るというのは、いまも昔も変わらぬ「あるある」だろう。子どもたちの学習に、親はどう向き合うべきなのか。「子どもをご褒美で釣るのはOK?」「宿題してお小遣いを与えるのはアリ?」そんな悩みは実際のところどうなのか。教育の費用対効果をデータに基づいて分析する教育経済学の専門家、中室牧子氏(慶應義塾大学総合政策学部・教授)がわかりやすく解説する。

(*)本稿は『学力の経済学』(中室牧子著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・再編集したものです。

しつけを受けた人は年収が高い

 海外だけでなく、日本のデータを用いた実証研究でも、非認知能力の重要性は示されつつあります。リクルートワークス研究所の戸田氏らは、日本のデータを用いて、中・高校生の時に培われた勤勉性、協調性、リーダーシップなどの非認知能力が学歴、雇用、年収に影響することを明らかにしています※1。同様に、明治学院大学の李専任講師らの研究でも、外向性や勤勉性といった非認知能力が、年収や昇進に影響を与えることが示されています※2

※1 リクルートワークス研究所の戸田氏らの研究は、戸田淳仁・鶴光太郎・久米功一(2014)「幼少期の家庭環境、非認知能力が学歴、雇用形態、賃金に与える影響」RIETI Discussion Paper, 14-J-019. 経済産業研究所。

※2 明治学院大学の李専任講師らの研究は、Lee, S. & Ohtake, F. (2014). The effect of personality traits and behavioral characteristics on schooling, earning, and career promotion. RIETI Discussion Paper, 14-E-023. Research Institute of Economy, Trade & Industry.

 神戸大学の西村教授らは、「しつけ」という違った角度から研究を行いました。4つの基本的なモラル(=ウソをついてはいけない、他人に親切にする、ルールを守る、勉強をする)をしつけの一環として親から教わった人は、それらをまったく教わらなかった人と比較すると、年収が86万円高いということを明らかにしています(図19)※3。なぜ、しつけを受けた人は年収が高いのでしょうか。その理由については、山形大学の窪田准教授らの研究が参考になります。

※3 西村教授らの研究は、西村和雄・平田純一・八木匡・浦坂純子(2014)「基本的モラルと社会的成功」RIETI Discussion Paper, 14-J-011. 経済産業研究所。


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