テストで「100点を取ること」と同様に重要な非認知能力

 私がこの章でもっとも強調したいのは、非認知能力の重要性です。

 子を持つご両親の多くは、お子さんの学力テストの結果に一喜一憂しがちです。点数や偏差値ではっきりと数字で表すことができ、その変化もよくわかる学力は当然気になるものでしょう。一方、非認知能力は数値化が難しいだけでなく、どれほど子どもの将来の成功にとって重要なものなのか、今まで十分に示されてきませんでした。この結果、きちんとしつけをすることよりも、テストで100点をとらせることのほうが大事だという価値観が、私たちの社会に根づいてしまっているようにも感じます。

 もちろん、学力は重要でないというつもりは毛頭ありません。しかし、これまでの心理学の貢献によって非認知能力は数値化され、そして経済学の貢献によって、非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されています。

 非認知能力は、人生のかなり長い期間にわたって、計り知れない価値を持ちます。しかし子を持つご両親の多くは、この非認知能力が子どもの成功に与える効果を過小評価しておられるように、私には思えるのです。

 最近では、非認知能力を鍛える手段として、部活動や課外活動にも注目が集まっています。他にも、高校生が高齢者にコンピュータの使い方を教えるという社会奉仕活動のように、教室で学んだことを地域社会で問題解決のために生かすような教育(サービスラーニング(service learning)と呼ばれる教育法)や、アウトドア活動なども有効であるといわれています※6

※6 サービスラーニングの有効性については、Gutman, L. M., & Schoon, I. (2013). The impact of non-cognitive skills on outcomes for young people. Education Endowment Foundationを参照。

 目の前の定期試験で数点を上げるために、部活や生徒会、社会貢献活動をやめさせたりすることには慎重であるべきかもしれません。学力をわずかに上げるために、長い目でみて子どもたちを助けてくれるであろう「非認知能力」を培う貴重な機会を奪ってしまうことになりかねないからです。

『学力の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)学力の経済学』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
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