支援を申し入れた米軍の真の目的は「志賀原発」との説も

 能登半島地震の発生直後から、アメリカは、在日米軍の災害派遣の準備ができていると、日本政府に打診している。

 最も信頼できる同盟国で、世界最大・最強の軍事力を誇る米軍の来援は心強い。在日米軍の基地は全国各地に存在し、5万人以上の兵力を駐留させているだけに、ベースとなる拠点や輸送機材、マンパワーは申し分ない。兵站能力も世界最強で、「自己完結力」は十分すぎるほどだ。

 自衛隊にとっても米軍は、共同訓練を密に重ね気心を知る間柄であるため、連携もスムーズだろう。

 米軍は日本での災害派遣の実績も重ね、「3.11」の「トモダチ作戦」では最大2万人の兵力を投入し、原子力空母「ロナルド・レーガン」までも投入。熊本地震でも物資輸送など後方支援を行っている。

「3.11」の際も在日米軍は「トモダチ作戦」と名付け、日本への支援作戦を展開した(写真:米海軍Webサイトより )

 そしていよいよ1月17日から在日米軍の災害派遣が本格開始。空自の小松基地(石川県)を拠点に、まずはヘリを使った物資輸送を展開している模様だ。

 だがその一方で、米軍側のもう1つのねらいは、能登半島中部の志賀町にある北陸電力所有の「志賀原子力発電所」の監視では、との説も囁かれている。

 志賀原発は「3.11」以降休止したままで、計2基の原子炉のうち1基を近く再稼働させようと、原子力規制委員会も安全確認を続けていた最中だった。ところが今回の地震で軽微ながらも被災したが、問題は「安全重視」とはおよそかけ離れた実態だろう。

 原発敷地内の震度計が実際よりも低い値を示していたのを皮切りに、外部電源用の変圧器が破損し大量の油が漏れたり、担当者の事故報告が二転三転したりするなど、信頼するにはほど遠い状況だ。

 もちろん同原発の再稼働は白紙に戻される可能性が濃厚だが、先の軍事評論家は次のような推測を披露する。

「米軍は3.11での福島第一原発事故の放射能漏れを相当心配したが、それ以上に警戒したのが『アメリカを敵視する国際テロ・グループなどが震災のどさくさに紛れて、高濃度の放射性廃棄物を奪うのでは』と言われている。

 アメリカにとって国家安全保障の“一丁目一番地”は『核』で、志賀原発に対し米軍が同様の警戒を抱くと考えるのが軍事の常識。現時点で放射能漏れなどはないようだが、今後大きな余震で原子炉が破損するかもしれない。

 米軍はこうしたシナリオも想定し、核の専門家を密かに現地に派遣、実情把握と同時に、被災地に米軍を展開させ、ある種の抑止力を働かせたいと考えている可能性が高い」

 能登半島の救援・復旧活動はこれからが本番だ。災害派遣は国家安全保障の要(かなめ)であり、自衛隊の実力がまたしても試されている。

【深川孝行(ふかがわ・たかゆき)】
昭和37(1962)年9月生まれ、東京下町生まれ、下町育ち。法政大学文学部地理学科卒業後、防衛関連雑誌編集記者を経て、ビジネス雑誌記者(運輸・物流、電機・通信、テーマパーク、エネルギー業界を担当)。副編集長を経験した後、防衛関連雑誌編集長、経済雑誌編集長などを歴任した後、フリーに。現在複数のWebマガジンで国際情勢、安全保障、軍事、エネルギー、物流関連の記事を執筆するほか、ミリタリー誌「丸」(潮書房光人新社)でも連載。2000年に日本大学生産工学部で国際法の非常勤講師。著書に『20世紀の戦争』(朝日ソノラマ/共著)、『データベース戦争の研究Ⅰ/Ⅱ』『湾岸戦争』(以上潮書房光人新社/共著)、『自衛隊のことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版)などがある。