「逐次投入」と批判した野党党首の“軍事オンチ”

 だが、佐竹敬久・秋田県知事は「(自衛隊は)少し後手後手。最初から1万人規模の投入が必要だった」と噛みついた。

 同様に立憲民主党の泉健太代表も「逐次投入で遅い」と、自衛隊を痛烈に批判した。しかも一部報道は、この逐次投入という発言を、ご丁寧に「(太平洋戦争時の)ガダルカナル島の戦いで、部隊を小出しにして撤退を続けた旧日本軍になぞらえた」と、補足解説して泉氏を“援護射撃”した。

 準備した兵力を一点集中で投入し敵を圧倒する「兵力集中」は軍事の常識だ。逆に優柔不断な指揮官が、投入兵力を小出しにして攻撃を仕掛けた結果、敵に各個撃破されるのが「逐次投入」で、「五月雨式」とも呼ばれる悪手だ。

 ある軍事評論家は、「『自衛隊は遅い』と批判した某知事は、2011年の『3.11』の経験もあってか、もどかしさを感じたのだろう」と、佐竹氏の発言に一定の理解を示すものの、泉氏に対しては首をかしげ、こう続ける。

「逐次投入発言は、仮に政権奪取を本気で考える最大野党のトップという自覚があるのなら、少々失言で、そもそも災害派遣は軍事作戦とは違う。また戦争でも、兵站(後方支援)が不十分な場合、大部隊を一気に突入させたら、武器・弾薬、食糧の補給が続かず、最悪の場合は全滅だ。

 泉氏が『ガダルカナルの戦い』を思い浮かべながら逐次投入と発言したとしたら、この戦いの失敗の本質から外れてしまう。しばしば逐次投入が旧日本軍の敗因と論じられるが、それ以前に、本土から何千kmも遠方の島まで進軍させた結果、補給線が伸びきり、兵站を維持できない状態で臨んだ無茶な作戦で、ここに何万人もの将兵を投入したこと自体が最大の間違いだ」

 実際、ある自衛隊関係者も、「泉氏は自衛隊に『旧日本軍と同じ轍を踏め』と言っているも同然。将来自衛隊の最高指揮官でもある総理大臣の椅子を本当にねらうのなら、軍事の“いろは”、特に兵站の大事さを勉強すべき」と指摘する。