そして、先述した2009年夏の総選挙で政権に就いた民主党は、政権運営に失敗し、わずか3年3カ月で、自民党に政権を戻してしまった。その責任は大きく、国民に政権交代への懐疑心を植え付けてしまった。せめて、2期8年くらい政権を維持し、多くの改革を実現していれば、日本でも定期的な政権交代が定着していたであろう。

改革がもたらしたもの

 2009年夏に発足した民主党の鳩山由紀夫政権下で、自民党的な政官業の癒着や、政策の一貫性の欠如などは是正されなかった。皮肉的な言い方をすれば、民主党政権は、政権交代・二大政党制が国民のためにならないことを実証してしまった。

 また、小選挙区制は政権交代を実現させたかもしれないが、様々な問題を生み出したこともまた事実である。

 第一に、政治家の質の劣化である。中選挙区制の下では、たとえば、自民党の三角大福中の五大派閥が競い合っていた。同一の党に属していても、候補者は切磋琢磨して、政策をみがいてきた。ところが、小選挙区制では、そのときの風で、どんなに無能な候補者でも当選するので、国会が衆愚の館と化すことになる。小泉チルドレン、小沢ガールズがよい例である。こうして、半数以上が使い物にならない国会議員からなる国会となる。

 第二に、政策中心ではなくなることである。私と政策や理念を共有する若い国会議員に、「なぜ民主党から立候補したのか」と問うと、「自民党から出たかったけれど、すでに自民党候補が決まっていたので、仕方なく民主党から出た」と答えた。つまり、1人しか当選しない(惜敗率で当選はありうるが)ので、選挙区情勢の便宜的理由が先で、政策ではないのである。

 第三は、小選挙区制だと、候補者は、政党に「おんぶにだっこ」で、自らの手で選挙を戦う努力を怠ってしまう。だから、小泉チルドレンは、ブームが去ると惨敗し、小沢ガールズも同じ轍を踏んだ。

2005年11月、自民党の立党50年記念大会で、壇上に勢ぞろいした小泉チルドレン。中央のマイクの前で拳を振り上げるのは現在コメンテーターとして活躍している杉村太蔵氏(写真:共同通信社)
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 中選挙区制の下では、政党ではなく、派閥間で競争したし、候補者は自らの個人後援会を基盤にして戦った。党の世話になっていないから、党と喧嘩別れするのも比較的容易であった。

 第四に、2013年12月の自民党の政権復帰以来、顕著になった「官邸主導」である。政治家は小選挙区での公認権を握る首相(自民党総裁)にひれ伏すことになる。政治家のみならず、官僚までそうなったのは、2014年5月に内閣人事局が設置されたことによる。

 首相官邸が各省の幹部人事を一元的に管理するようになったため、首相官邸に権力が集中するようになり、首相の意向を忖度する官僚が増えてしまった。

 以上のように考えると、小選挙区制が今の日本政界の閉塞感を生み出している一因であると言えよう。それを打ち破るには、小選挙区制を廃止し、新たな選挙制度に変えることを考えてもよい。