(3)筆者コメント

 プーチン大統領は、欧米がウクライナへの支援を再開したことから、支援兵器が戦場に到着する前に勝負に出た。

 ロシア軍は2024年5月10日から、ウクライナ北東部ハルキウ州への越境攻撃を続けている。

 2022年2月の全面侵攻開始当初、ロシア軍はハルキウ近郊まで進軍したが、ウクライナ軍に押し戻された。しかし今、再び前進している。

 そして、ウクライナ第2の都市でロシア国境からわずか24キロメートルほどのハルキウが、ロシア軍の激しい圧力にさらされている。

 しかも、ロシア領内から発進する航空機から発射される誘導型滑空弾や地上から発射される弾道ミサイルによる、ウクライナ領内の住宅地などへの執拗な攻撃の結果、住民の死者が増え、人道危機的状況が引き起こされた。

 この状況を早急に打開するため、ウクライナのみならず欧州各国から、ウクライナに供与した兵器によるロシア領内への攻撃を認めようという声が大きくなった。

 そうした中、バイデン政権は、ウクライナ侵攻を巡り、大きな政策転換を行った。

 ロシアの核使用を招くエスカレーションを恐れる米国が、ウクライナに対してこれまで禁止していた米国製兵器によるロシア領への直接攻撃を部分的ながら容認したのである。

 筆者は、これら欧米諸国の政策転換は、ウクライナ戦争の戦局の転換点になるとみている。