3.F-16戦闘機のウクライナへの供与の影響
(1)経緯
①2023年5月19日、CNNは「バイデン政権はNATO加盟国に対してウクライナへのF-16移転を許可する意向を伝えた」と報じた。
②2023年5月19日、ホワイトハウスで安全保障政策を担当するジェイク・サリバン補佐官は、G7サミットが開かれている広島で記者会見し、ウクライナが求めているF-16戦闘機をめぐり、米国として欧州の同盟国が供与を決断した場合、容認する立場を示した上で、F-16戦闘機を使った訓練の実施を支援すると明らかにした。
オランダのマルク・ルッテ首相は「ウクライナは、オランダと国際的なパートナーたちの揺るぎない支援を頼りにしていい。手順は数週間のうちに決まるだろう」と書き込んだ。
デンマークの国防省も「デンマークは支援の準備ができている。同盟国とともに、詳細について優先的に取り組んでいく」と書き込んだ。
③2023年7月11日、ウクライナのオレクシー・レズニコフ国防相は、ウクライナ空軍へのF-16戦闘機の訓練を提供する「(国家)連合」が結成されたと、SNSで明らかにした。
リトアニアで開かれているNATO首脳会議の機会に、ウクライナがデンマークなど11の支援国との覚書に署名した。
レズニコフ氏によると、ほかに参加するのはオランダ、ベルギー、カナダ、ポーランド、英国など。
ウクライナのパイロットや技術者、支援スタッフが訓練プログラムに参加する。F-16以外の戦闘機も訓練に使う可能性があるという。
④2023年8月27日、オランダ、デンマークに続いて、ノルウェーがロシアと戦うウクライナにF-16を供与すると発表した。
ロッキード・マーティンのより新しい「F-35」ステルス戦闘機との置き換えに伴い、余分になるF-16を渡すという。
3カ国がすでに余っている、あるいは今後余るF-16A/B MLU(Mid-Life Update=就役中改修)をすべて提供するとすれば、ウクライナは60機超のF-16を得られそうである。
⑤2023年11月13日、ウクライナへの米製戦闘機F-16の供与に向け、米欧12か国が支援する「欧州F-16訓練センター」が13日、ルーマニア東部のフェテシュティ空軍基地で発足し、メディアに公開された。
⑥2023年12月22日、オランダのルッテ首相は、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、オランダが保有する米戦闘機F-16を18機、第1陣としてウクライナに引き渡す準備を始めたと伝えた。
⑦2024年5月10日、ウクライナ軍関係筋は6~7月に初めての供与を受けるとの見通しを示した。ただどの国からの供与になるかは明らかにしなかった。
また、ウクライナ空軍報道官は、ウクライナ軍の一部パイロットの訓練が完了しつつあると明らかにしている。
⑧2024年5月28日、ベルギーは2028年までにF-16戦闘機を30機供与する。
両国が5月28日に締結した安全保障に関する二国間協定の中に盛り込まれた。ドゥクロー首相は第1陣となる複数機のF-16を「今年中に」引き渡すと改めて述べたという。
⑨2024年5月29日、スウェーデンが「サーブ340」改造の早期警戒管制機(サーブ340AEW)を2機、ウクライナへ供与すると発表した。
当初スウェーデンからの供与が期待されたのはグリペン戦闘機だったが、スウェーデンのポール・ヨハンソン国防相はグリペンの供与計画を停止したことを既に発表している。
⑩2024年6月6日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は自国製のダッソー「ミラージュ2000」戦闘機を、ウクライナに供与すると発表した。