(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)
振る舞いに問題があるのは顧客だけとは限らない
最近、何かと話題に上ることが多くなったカスタマーハラスメント(カスハラ)。
ハラスメントブーム到来で、次から次へと新たに「○○ハラスメント」が生み出される中、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)などとともに、カスハラもよく知られるハラスメントの一つとなりました。
注目度が上がるにつれ、カスハラへの世の中の意識も高まりつつあるように感じます。JR東日本や西日本など、カスハラに対して毅然とした姿勢を示すことを明言する企業も見られるようになってきました。また、今年4月には東京の住宅設備販売会社が取引先企業に対し、横暴な振る舞いをしたとして1100万円の損害賠償を求める訴訟を起こしています。
かねて問題視はされてきたものの、ようやく公にその被害が認識されつつあるカスハラ。このまま世の中の意識が高まり、人々が敏感になっていきさえすれば、カスハラはなくすことができるのでしょうか。
カスハラは、2023年から労災の認定基準として追加されました。また、厚生労働省ではガイドラインを作成して対策強化に努め、東京都では全国初のカスハラ防止条例制定に向けた議論(東京都:カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会)が進められています。
このようにカスハラが問題視されればされるほど、横暴な顧客は減っていくことが期待できます。それ自体は望ましいことです。ただ、振る舞いに問題があるのは顧客だけとは限りません。
自身が顧客の立場だった際、従業員に横柄な物言いや失礼な対応をされて不快になった経験のある人は少なくないのではないでしょうか。腹に据えかねて注意しても、反省するどころかこれみよがしに失礼な態度をとられ続けて激高した、なんて話を耳にしたこともあります。今年5月、「表出ろよ、この野郎!」と顧客を怒鳴りつけたマクドナルド店員の動画が、逆カスハラだと話題になったのも記憶に新しいところです。
カスハラが問題であることは間違いありませんが、その一方で従業員側が加害者となる「スタッフハラスメント」もあることを考えると、カスハラ意識ばかり高じ過ぎて、顧客に不快な思いをさせる従業員が増えてしまうようでは困ります。