5月26日に開催された日韓首脳会談で握手する岸田首相と尹大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • 5月26日にソウルで開催された日韓首脳会談でのLINEヤフー問題に関するやり取りが、反日感情に火に油を注いでいる。
  • 日本に「白旗をあげて降伏宣言した」と野党は尹大統領を攻撃。「韓国が日本の属国になる」と過激な意見も。
  • 会談した岸田首相は、独善的と批判される尹大統領の同類と見られており、両首脳の不人気ぶりが日韓関係の改善の足かせになる可能性がある。(JBpress)

(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 日中韓首脳会談を翌日に控えた26日の夕方、ソウルで日韓首脳会談が開かれた。そのなかで尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、両国間で大きな懸案事項となっているLINEヤフー問題について話を切り出したという。

 韓国の親会社ネイバーに資本関係の見直しを迫った日本政府の対応が行き過ぎだとの指摘が一部のメディアなどにあったが、今回の会談で韓国側が日本側に詰め寄った様子はなかったらしい。それどころか会談終了後には「LINEヤフー問題と日韓関係は個別」というタイトルの報道が各メディアから続々と発信された。

 こうした報道は、韓国人には悪い意味で相当のインパクトがあった。野党の共に民主党からは不満が爆発。同党のスポークスマンは「日本に未来まで上納した」としたうえで、「日本の真っ赤な嘘を認めた」もので、「尹大統領は白旗をあげて降伏宣言した」と厳しく断罪した。

 また、共に民主党に所属する科学技術情報放送通信委員会の幹事からは、「そんな日韓関係がなぜ必要なのか」という言葉まで飛び出した。また、韓国内のSNSやブログを見ても、尹大統領に対して「消極的姿勢」や「遺憾表明さえしない」と厳しい意見が噴出している。

 LINEヤフー問題は、2021年3月にさかのぼる。LINEの業務委託先だった中国の関連会社の従業員が、18年8月から約2年半にわたり、日本国内の個人情報データにアクセス可能な状態だったのだ。

 この事件を受けて対策は取られたものの、昨年9〜10月にかけて、再び個人情報が流出した。これを受け、総務省は今年3月にLINEヤフーに対し行政指導をしたものの、内容が不十分とされ、4月16日に2度目の行政指導を実施した。資本関係の見直しが言及されたのは、そのときである。

 このことは韓国でも大きく報じられ、反日感情が高まった。